グリーフケア、グリーフカウンセリング

「グリーフカウンセラーは遺族のコンサルタントというよりは、その旅の不確実さを共有し、共に歩む旅の友であり、予想もつかない新しい適応への道を”導く”というよりも”共に歩む者”である」
ロバート・ニーメイヤー

グリーフケア、グリーフカウンセリングは必要か

グリーフが喪失への自然の反応である、というのなら、グリーフケアやカウンセリングというものが必要であると言えるのでしょうか。愛する人を亡くすことは人間にとって目新しい経験ではなく、今までは「何とかして来た」はずではないのでしょうか。

確かに、伝統的に親戚、友人、地域のコミュニティーや寺は、死の直後だけでなく、その後の何か月、時には何年も愛する人を亡くした人を支えて来ましたし、いまでもそのサポートは引き続き大きな意味を持っています。
しかし、今日の社会では、平均寿命の伸長・核家族化、闘病・死亡場所の病院への移行、宗教の地位低下や個人主義の徹底などにより、人々は死になじみがなく、死にどう対処していってよいのか不安に思っており、また、伝統的なサポートもその社会的な変化に有効に対応しているとは言えません(詳しくは死を取り巻く状況)。そういった中で、グリーフケアやカウンセリングの有用性、必要性に注目が集まっていると言えるのです。

ソーシャルワーカーであるデニス・レイリーはグリーフカウンセラーの必要に関してこう言っています。「私たちは必ずしも職業としてのグリーフカウンセラーを必要としているわけではありません。必要としているのは宗教家、葬儀社の方、家族療法家、看護師、ソーシャルワーカーや、一般医など、すでにグリーフの問題に関連する人々に、この問題をもっとよく考えてもらい、もっと繊細であり、そしてもっと実際の活動をしてもらうことなのです」。
日本におけるグリーフカウンセリングへの関心はまだ始まったばかり、今後の啓蒙活動を通じて、グリーフカウンセリングとその意義へに理解が広がっていくことが期待されています。

どのような時に人は専門家の支援を検討するべきか

「助けを求める」の中で、一般的な、どんな時に助けを求めるべきかを紹介しています。又、専門的助けが必要と考えられる、複雑なグリーフにおける複雑化したグリーフの表れの中にも専門家の支援を必要とするケースの例があると思います。

グリーフケア、グリーフカウンセリングの考え方と姿勢

グリーフケア

「グリーフケア」の基本的な考え方は、悲嘆の表現として現れる様々な感情や行動などを、正常なものとして、共に受けとめることです。遺族の悲嘆を完全に共有したり、理解することはできませんから、その気持ちを察して、その人に寄り添い、支える、と言うことが出来ます。

グリーフカウンセリング

グリーフカウンセラーはグリーフケアを行う人に比べるともう少し専門的な、特化した知識や経験を持つ「相談員」です。専門的な知識、とはいってもあくまでも相談員ですから、心の問題を魔法のように「解決」するわけにはいきません。また、グリーフカウンセリングが全ての人に必要とは思えませんし、グリーフカウンセラーのできる事にも限界があり、医療機関との連携も十分とは言えないかもしれません。
しかし悲しむ人が、「なんとか耐えているだけ」の状態ではなく、「積極的に新しい自己を見つけ出したい」「故人との繋がりを無かった事にしてしまうのではなく、新しい意味を見つけ出したい」と思っており、自分一人でその課題に対処するのが難しいと感じているのなら、グリーフカウンセラーは一つの手助けになるきっかけとなると考えられます。

グリーフカウンセリング とグリーフセラピー

ウィリアム・ウォーデンは、その著書「グリーフカウンセリング」のなかで、グリーフカウンセリングとセラピーを区別しています。ウォーデンは「グリーフカウンセリングは、非複雑的でノーマルなグリーフを持つ人を、ある程度の時間内に、健康的にグリーフの課題を完結させることであり、それに対してセラピーは、複雑なグリーフを持つ人の葛藤を様々なテクニックを使って解決していく事」であると言います。

グリーフケア、グリーフカウンセリングの資格

グリーフケア、グリーフカウンセリングは日本においてはその黎明期と言える段階で、日本では現在のところ、公的なグリーフカウンセリングの資格はありません。医療関係者、その他の資格を持つカウンセラー(心理療法士、スクールカウンセラー、産業カウンセラーと言った方々)、葬儀関係者など死に関わる方々が、グリーフについて学び、日々の仕事の中でグリーフカウンセラーとしての機能を果たされているのが現状です。
グリーフカウンセラーを育成する機関も日本では数少なく、大学レベルでは、上智大学のグリーフケア研究所が挙げられます。それ以外にもグリーフについて学べる学校は数か所あります。 例えば、グリーフカウンセリングセンター(GCC)では非常に専門的な授業を長期間にわたって行い、グリーフカウンセラーの養成に務めています。