子供に死をどう伝えるか

子供に死をどう伝えるか、と言うのは大切な問題です。かわいそうだから、まだ理解できないからという理由で、死を隠したり、葬儀などに参列させなかったりすることが良くありますが、専門家によると、子供に死を伝えないのは誤りだと言います。適切な言葉で死を語り、家族の小さなメンバーとして意思決定に参加させるくらいの事が必要です。

子供と死の認識

子供の死の認識については、子供の年齢と発達段階により大きく異なっています。「がん情報サイト」が非常に専門的かつ的確な一覧を提供していますので、ここに紹介します。

年齢 死の理解 悲嘆の表現
乳児期~2歳児

死をまだ理解できない。
母親との分離が変化を引き起こす。

  • 沈黙、不機嫌、活動量低下、睡眠減少、および体重減少。
2~6歳 死は眠りに似ている。
  • 多くの質問をする(お母さんはどうやってお風呂に行くの?どうやってご飯を食べるの?)。
  • 食事、睡眠、および排尿・排便コントロールにおける問題。
  • 見捨てられることへの恐れ。
  • 激しい怒り。

故人は何らかの形で生きて機能している。
死は一時的なもので、終結ではない。
故人は生き返りうる。

  • 魔法の力によるというような考え(僕(私)が考えたこと、僕(私)がやったことが原因で死んじゃったの?お前なんか嫌いだとか、お前なんか死んじゃえとか僕(私)が言ったから?)。
6~9歳 死は、ある人間または精神(骸骨、幽霊、ブーギーマン)として擬人化される。
  • 死に対する好奇心。
  • 具体的な質問をする。
  • 死に対して過大な恐怖を抱くことがある。
死は終結で恐ろしいものである。
  • 攻撃的行動を示すことがある(特に男児)。
  • 架空の疾患に不安を抱くものがいる。
死は他者には起こるが、自分には起こらない。
  • 見捨てられたと思うことがある。
9歳以上 誰もが死ぬ。
  • 感情的高まり、罪悪感、怒り、恥ずかしさ。
  • 自己の死に対する不安の増大。
  • 気分の動揺。
死は最終的で変えられないものである。
  • 拒絶されることへの恐れ、仲間と違うことを嫌がる。
自分も死ぬ。
  • 食習慣の変化。
  • 睡眠における問題。
  • 退行的行動(戸外の活動への関心喪失)。
  • 衝動的行動。
  • 生存していることの罪悪感(特に、兄弟や姉妹、あるいは仲間の死に対して)。

子供に死をどう伝えるか

死の説明をする

死についてはその子供の年齢と発達段階にそって死について説明することが重要です。何も語らないことはその話がタブーであることを示唆し、子供のグリーフの解決にはなりません。説明は簡潔で、直接的であるべきで、子供に質問があるなら正直、かつ素直に説明をするように心がけましょう。米国国立がん研究所によると子供のグリーフのの表現には、以下のような3つの重要テーマがあるといいます

  • 僕のせいで死んじゃったの?
  • 僕や他の人(ほかの兄弟や親)にもそういうことが起こるの?
  • これからはだれが僕の世話をしてくれるの?

このように、小児は自分の安全を保証してもらいたいという気持ちがあるので、その点に関する不安を解消することが重要です。

正しい言葉をつかう

子供に対してはストレートではっきりした言葉で死を語ることが重要です。子供に死について教える会話は難しいものですが、子供への死の衝撃を和らげようと思って、「お星さまになった」、「遠い国へ旅にいった」、「ずっと寝ている」、「亡くなった」というようなあいまい・遠回しな表現を使用するのは小児を混乱させ、誤解につながるので、使用しないことが大切です。

喪の儀式への参加

家族の死後、子供も葬儀などに参列することは可能で、またそうするべきです。参加を強制するべきではないと思いますが、参加を勧め、子供にも大切な人を送り出し、追悼する機会を与えましょう。しかしその場合、そういった儀式で何が起こるのか十分説明しておくことが大切と言われています。

  • お通夜やお葬式では、どんなことをするのか
  • お子さんの面倒をだれが見るのか(親がずっと一緒にいられない時で、親戚が面倒を見る、一緒に座る場合)
  • 何を見、聞くのかとその意味(棺、お経、泣いている人)
  • 火葬場に行く理由(火葬場はどんな所か、どのような光景を見ることになるのか
  • 年齢によっては、家族のメンバーとして儀式について希望を聞くことも勧められる

遺児のケア

阪神淡路大震災の翌年に育英会が主催しで行った日米シンポジウム「震災遺児の悲嘆と癒し」の基調講演でJ ・W ・ウォーデンは遺児を助けるボインととしで以下 の九点をあげています。

  1. 死別児に、自分がケアされていることを知らせること。
  2. 親の死は自分のせいだと思わせてはいけないこと。
  3. 死に対する正確な情報を与えること。
  4. 自分が重要な存在である、と知らせること。
  5. 死別後も、それまでと変わらない生活を送らせること(食事、睡眠など)。
  6. 子どもの質問に、きちんと答えてあげること。
  7. 子どもの感情を尊重すること(子どもの感情をそのまま受け入れること)。
  8. 子どもは、死んだ親を覚えておかなければいけないこと。
  9. 遺児は、おとなを必要としていること。

(「遺された人々の声を聴く」中島由佳利より。元出典はあしなが育英会レインボーハウス編「七色の虹が架かるまで ― 阪神大震災遺児とレインボーハウスの10年史」)